【あなたにとっての売れやすい会場を見つける➅】講義-第19回-会場契約時の注意事項と契約書
講義第19回の今回は会場契約時の注意事項と契約書です。
今回は実際に展覧会をする会場を決めて、会場側との展覧会の開催にあたって契約をする際の約束事を明確にしましょう!という内容です。
「契約とか契約書なんて言うとなんだか仰々しくて大袈裟なんじゃ・・・」と思うかもしれませんが、絵を販売するとなれば金銭が絡んできます。
先方(会場や画商さん)と互いに気持ちよく取引をするため、作家である自分自身を守るため、仕事として展覧会をきちんと遂行するためには大切なことなので、しっかりチェックしてくださいね(^^)
ではでは、早速いきましょう。
講義-第19回-会場契約時の注意事項と契約書契約時の注意事項
展覧会開催に向けて会場を利用するにあたって契約をするわけですが、そこでしっかりと相手方と話し合って確認、注意しておきたい項目があるわけです。
まずはそれぞれ注意事項をピックアップします。
〇マージン
企画展示の場合、画廊なら50%、百貨店なら40%までは平常と考えましょう。60%以上なら良い条件です。
画廊でも、40%以下の場合は細かく作家側と会場側、それぞれの負担を確認すぺきです。
例えば、マージンが30%だったとしても、額代・交通費・滞在費(宿代)を会場側(画商)が持ってくれるという場合もあります。こういった場合は売り上げが100万円を余裕で超える見込みがある場合は損をしますが、100万円未満であればそんなに悪くはない条件だったりします。
貸し画廊の場合でもマージンを取る場合はあります。
画廊の顧客・作家の顧客・全くの新規のお客様などで細かくマージンを分けるというのも1つの考えではあります。
結局のところは、会場が作家のために何をしてくれるのか、何をしてくれたかで判断するのがいいでしょう。
〇クレジットカード手数料や支払い方法の確認
基本的に銀行振込が現金等のような会場は、お客様がクレジットカード払いを選択した場合、手数料を3~5%ほど作家側も負担する場合があります。(売り上げから相殺)しかし、それ以上の%を負担として提示してきたら黄色信号です。。
会場によってまちまちなので、電子マネー決済関係など対応している支払い方法についても確認しておきましょう。
〇売上の支払いシステムの確認
企画展示の場合、販売作品の金銭授受は会場側が行います。したがって売り上げは一度すべて会場に入ります。
その後どういう段取りで作家側に支払われるかを確認しましょう。
・支払い期日
「月末〆翌月払い」や「翌月末〆翌々月末払い」など数か月後に支払われることが普通です。
売上が少なかった時、個人経営の場合は時々最終日に現金で支払われたりすることもあります。
方式や展覧会が終わってから払われるまでの期間は会場によってまちまちなので、要確認です。
・支払い形態
銀行や郵便局の口座振り込みが一般的ですが、小切手や現金の場合もあります。
このあたりのことは相手方にマージンの流れから喋らせて、
「ではそのシステムだと私の展覧会の場合は〇月〇日ごろに入金されるわけですね~」と言ってその場でメモしてしまうのがベストです。
正直、展覧会前でまだ売上も上がっていないのにこの事については確認しづらいかもしれません。。
が!ビジネス上重要なことです。売上が支払われるまで展覧会が終わったとは言えません。
〇搬入・搬出費用
主に作品の送料です。
”持ち持ち”と呼ばれる搬入は作家持ち・搬出を会場持ちと言う場合も多いですが、両方作家持ちの場合も多いです。
絶対に発生する費用なので、必ず事前に話し合うべき項目です。
〇DM
DM制作費の負担です。ポジ提出(画像データ)をすれば会場側が制作をしてくれるという場合は作家側が費用を負担する場合がありますが、ない場合もあります。
〇印紙代
画廊がその画廊の顧客に出す場合の切手代を誰が負担するのかです。
作家側なのか、会場側なのか、これもやはり最初にはっきりさせたほうがいいです。
〇販売の際のお客様への送付費用
手持ちの場合を除き、送料費用の負担です。あとは、梱包費もある場合があります。
作家か?会場か?地味にかかる部分なのでけっこう大事です。
〇消費税
現在10%の消費税込みの値札を提示することとなっていますが、10%全てを会場が要求する場合もあります。
マージンを決める際にこのことも話し合いましょう。
インボイス制度も絡んでくる内容なので、要確認です。(インボイス制度については講義 第12回でも触れています)
〇OP
オープニングパーティーの有無や費用。
〇不測の事態(保険など)
盗難や破損、火災などの災害被害の際どう補償してもらえるのかについても作家側から申し出で事前に話し合うことは必要です。
この点についての会場側からの呼び掛けはまずないと思ってください。
また、お客様が作品でケガをするなどの事故についての”責任の所在”も明らかにしておく方がいいです。
なにか起こってからではこちらが責められてしまっても反論できないので、言い出しづらいかもしれませんがはっきりさせましょう。
講義-第19回-会場契約時の注意事項と契約書契約書の形式と作成にあたって
契約書の一般的な形式はA4用紙プリントです。1~3枚程度で内容を納められるとグッドです。
手書きで作成してもいいですが、やはりPCのWordなどでベタ打ちするだけでもいいのでそのほうが見やすい書類を作成できるでしょう。
相手に契約書を渡す際は封筒に3つ折りか、クリアファイルに入れて渡せるととてもスマートです。
契約書の作成にあたっては、会場側の相手方(画商さんなど)とできれば直接会って話し合いながらメモ書きするか、スマホやPCに打ち込むところからまず原案作成しましょう。
この工程に関しては電話やメールはおすすめしません。相手がしゃべった内容のメモを目の前で取るという姿を見せることも大切なので(言質を取りましたよ、という感覚)。
その原案から書面に整えて契約書として作成し、後日対面で契約書を相手に渡して読み合わせをして確認しましょう。その際は必ず自分と相手、同じ契約書の内容になっているかを必ず確認してくださいね。
そこで内容がOKなら、日付・サイン・登録の印鑑(会社)か実印を押印して完了です。
修正が必要な場合は内容を確認して再度作り直すか、添え書きしてしまうかで対応しましょう。
講義-第19回-会場契約時の注意事項と契約書契約書の書面に入れたい必須項目 25点と契約の一例
契約書に入れておきたい内容をずらーっとあげました。
→一行目に契約書の一例を添えたので、これを参考にこの項目の内容を相手方と全て話し合ってしまえると楽です。
上からこの順番で項目を入れていけばまず間違いはないですが、※の項目はやる・やらない、会場側の利益追求の温度感を見て入れるかどうかを判断してもいいと思います。
➀会場
→例:〇〇ギャラリーC(東京都渋谷区〇〇1-23-×‐2F)
→例のように会場名と住所を表記しておくと〇。
②会期日程
→例:20〇〇年〇月〇日から〇月〇日の7日間
→例のように日程と期間を表記しましょう。
➂会場費
→例:会場費は画廊負担(維持・光熱費を含む)。
→会場費はどちらが負担するのか、もしくはパーセンテージがあるのかを確認しましょう。
→貸画廊の場合は費用とマージンのバランスをチェックしましょう。
➃DM費用
→例:DMは画廊負担
→DM制作でかかる費用負担をどちらにするか、それとも折半なのかを確認しましょう。
⑤画料マージン
→例:売上より:作家〇%・画廊〇%
→注意事項で確認してしっかり明記します。
→絶対忘れちゃいけない項目です。
➅消費税
→例:消費税は全額画廊
→10%をお互いにどう分けるのか 作家〇%・画廊〇%
→大体は会場側に行くことが多いです。
⑦搬入費用
→例:搬入は作家負担
→大抵は作家持ちが多いです。HPなどで記載がある場合もあるので話し合う事前に確認しておくといいです。
⑧搬出費用
→例:搬出が送りの場合は費用を画廊が負担し、作家が車などでできる場合は作家の負担とさせてもらいます。
→会場によってまちまちですが、搬入費用を作家側が負担した場合は会場側が持ってくれる場合があります。
⑨搬入・搬出の期日
→例:搬入出の期日については事前に話し合う(すぐ決められるなら「〇月〇日必着」など日付もOK)
→必ず確認しましょう。逆算して予定を立てることになるので、しっかり決めましょう。
⑩搬入リスト提出について
→例:搬入リストを作成し事前に画廊に提出する(日付が決められるなら「〇月〇日〆切」もOK)
→作家側が作成して会場側に送ります。リスト提出の期限日も大体でもいいので決めておくといいです。
⑪搬入リストと実際に搬入した作品の確認
→例:搬入の際は必ず搬入リストと実際搬入した作品を画廊立ち合いのもと確認する。
→必ず飾り付けの際に搬入リストを見ながら、実際に搬入した作品を会場側の立ち会いのもと確認する事項はいれましょう。
→万が一の場合、搬入の過程での紛失・盗難などへの対策です。
※⑫オープニングパーティについて
→例:オープニングパーティーの有無はその都度話し合いをしますがやる場合は持ち寄りで。
→有無について。やる場合、持ち寄りにするとか費用負担などを明記しておきましょう。
※⑬ワークショップについて
→例:ワークショップの有無はその都度話し合いをしますが、有料の場合はマージンを折半する。無料の場合は会場が経費を負担する。
→こちらも有無について。やる場合、有料/無料・申し込み方法・費用負担について明記しておきたいところです。
→内容については企画書で作ってあるとスマートです。
⑭会期中の作家在廊について
→例:会期中は原則として作家本人は全日程会場に詰める。
→作家が会場にどれくらい在廊するのかを明記します。(〇日と〇日、全日程、など)
⑮作家在廊のための交通費や滞在費
→例:常駐のための交通費や滞在費は原則的に作家が負担する。
→基本的には作家側で持つことが多いですが、画料のマージンとの兼ね合いによっては会場側が持ってくれる場合もあるので確認しましょう。
⑯作家が配布するDMの枚数や自己負担について
→例:作家はDM〇枚を印紙代自己負担で顧客やメディアなどに配布する。
→メディア配布や店頭に置いてもらうなど含めての、作家側が負担するDMの印紙代を負担する旨の内容です。
→下の⑯の項目と合わせてしまって(DM経費の振り分けについて)として表記してもいいかもしれません。(今回は敢えて分けました)
⑰画廊が配布するDMの経費の負担(DMの経費について)
→例:画廊が画廊の顧客等に配布するDMの費用は画廊が負担する。
→最近ではHPなどに記載がある会場もあります。
→補足でも書いた通り、この項目は重要なのでしっかり確認しましょう。
⑱プライスカードやキャプションの作成について
→例:プライスカードとキャプションは搬入リストに合わせて画廊が作成する。
→会場側が作品リストをもとに作成することは多いですが、会場によってなので費用の負担なども確認したほうが安心です。
⑲販売作品のお客様への受け渡しなどの事務や費用の負担について
→例:販売作品のお客様への受け渡しなどの事務や費用は画廊が負担する。
→これは画廊側が負担することが多いですが、どちらが負担するかを表記しましょう。
※⑳作家側が行う展覧会のための営業や事務的努力について
→例:作家は事前に会場や企画者と話し合いメディアに対する案内文やPR文の作成・営業など展覧会のための事務的努力を行う。
→作家側が行う営業や事務的な努力の内容を表記しておくといいです。(メディアへの営業や案内を出すなど)
→一応あるといいですが、会場の温度感によって入れても入れなくてもいいと思います。
㉑作家への決済支払いの目途
→例:作家への決済支払いは会期最終日後の最初の月末〆翌月末払いを目途とする。
→画廊の決済システムにもよりますが、作家への決済支払いは「会期最終日後の最初の月末〆翌月末払い」あたりに設定することをおすすめします。
㉒作品保管時の盗難破損に関して
→例:作品保管時の盗難破損に関しては搬入前に作家のほうから申し出て必ず画廊と話し合いを行う。
→例文か、もしくは画廊側と話し合って決めた内容を明記します。
→大体このあたりは言ってくれないので、作家側から切り出してはっきりさせた方がいいです。
㉓専属契約かそうでないか
→例:今回の契約に関しては専属契約ではない。
→専属契約になってしまうと囲い込み等で他の会場や画商さんとのお付き合いが出来なくなってしまうので必ず確認しましょう。
※㉔売り上げ目標
→例:義務ではないが〇~〇万円以上を目安とする。(〇日間)
→例のように一応あるといいですが、会場の温度感によって入れても入れなくてもいいと思います。
㉕署名欄
→日付・名前・はんこ の欄を最後に載せておきましょう。
→相手に渡して署名をもらうものには先に書いてはんこを押しておくと現地での手間が減ります。
講義-第19回-会場契約時の注意事項と契約書注意事項の補足‥損をしないために・・
契約書を作成したうえでは基本的に契約書にない新規の費用負担について要求された場合、受け入れる必要はありません。
時々、「売上が少なかったのでDMは作家が負担してください。」など、展覧会の結果を受けて最初の条件と変えてくる会場もあります。他の費用負担とかでもあり得ます(搬入出とか)。
原則的に受け入れる必要はありませんが、その会場と今後どのように付き合って行くかで微妙に判断を変えてもいいと思います。気持ち良く付き合いたい場合はのむのも一つの手です。
会場に契約内容の提示がフォームなどであれば、それを確認する作業だけで十分ですが不明瞭な点、不十分な点は自分から確認しましょう。
確認せずに不測の事態があった場合は作家側の負担が来てしまうと思っておいた方がいいです。
会期終了後、少なくとも画料の支払いが完了するまでは搬入リストと一緒に大切に保管しましょう。画料の支払い完了までが展覧会です。
作家がそうであるように会場のやり方も千差万別で、会場経営の側でさえ芸術に関する事でお金の話をするのをいけないことと思い嫌がる傾向はあります。
このような現状の場合、会場といち早く信頼関係を築くことが大切です。それには回数会ってよく話し合う必要があるでしょう。
会期前に(下見を含め)足繫く会場に通うのが信頼を深めるのには一番手っ取り早い方法です。お互いがよーく確認しても見落とすこともあるでしょうが信頼関係があれば乗り切ることができます。メールなどで連絡を取っておくのも有効です。
作家のポジションによっては額代や材料費、作家の会場への交通費や滞在費、飲食費を負担してもらえる場合もあります。早くそういう立場になってしまいましょう(^^)交渉したりすることも大切です。
講義-第19回-会場契約時の注意事項と契約書まとめ
お疲れさまでした。
いかがでしたか?
今回は
会場契約時の注意事項と契約書
をお送りしていきました。
この契約書に関してもポートフォリオ等と同様に、究極を言うと”絶対の正解”はないです。
日本の美術業界はまだまだ整備されていないので決まったフォームは無いってかんじですね。
とはいえ契約書に正解があるとすれば、お金に関わることや万が一有事の際、責任の所在をお互いのために明確にしておけるようにできるものであるということでしょう。
作家側がそれらに疎いせいで、会場側から言いくるめられて損をしてしまうケースは正直少なくないです。
もちろん、そんな会場ばかりではないんですが、展覧会をお仕事として成功させるため・ご自身を守るためにも備えあれば憂いなしです(^^)
また次の講義でお会いしましょう!
※今回ワークはお休みです。ご質問等あれば以下フォームから送信してくださいね。
ワークは今回も2週続けてのお休みとしました。
講義内容は展覧会準備に向けてさらに内容が濃くなってきます。これまでのワークやご自身の制作を進めつつ学んでいきましょうね~(^^)
講義-第19回- フォーム
ご質問・アンケート(あれば)
今回の講義内容での質問などあればこちらにお願いします。
あなたやこの講座で学ぶ仲間にとって、充実した講座を作っていくためにあなたの抱えている悩みやギモンをぶつけてもらえると嬉しいです。
(※講義内容の参考にさせていただきます。)