【展覧会の準備方法を知る➁【作業タスク編➂】】講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)
講義第24回の今回は額装と商品としてのパッケージング 前編です。
今回は【講義-第22回-手堅く売れる画家の展覧会準備必須タスク一覧】の➃~⑦にあたるタスクです。
ずばり、プロとアマチュアの差が見た目に分かりやすく出るタスクですね。
作品を販売するためには描いて描きっぱなしにするのではなく、「商品」として責任を持ってしっかりと体裁を整えて送り出せるかたちにする必要があります。
この額装のパートは前後編で解説していきますので、前編の今回は④~⑦、次回後編では⑧・⑨と分けていきます。
ではでは、早速いきましょう。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク➃~⑦)➃全ての作品に合う額を選んで額装する(額紐も必ず結んでおく)
今回の作業タスクの中で1番の重要な内容です。
額装するにあたっては大きく分けて2つあります。
〇オーダーフレーム(注文)
〇既製額(またはセミオーダー)
そのままですが、オーダーの場合には全てを1から決めて作ってもらえます。
既製額は、規格サイズが決まっていて、そのサイズに該当する大きさの支持体(キャンバスやパネルなど)がおさまるように作られた額縁です。
当然オーダーとなれば費用は既製額よりかかりますが、額縁を知って上手く使いこなせるようになるためにも一度は作ってもらうことをおすすめします。
オーダーをする場合には以下の内容をプロ(業者さん)に確認しながら作ってもらえるので、額縁の構造を理解できる機会にもなるのでかなり勉強になりますよ(^^)
・自分の作品に合う額のデザインや雰囲気(見た目)
・技法別での額(デッサン・水彩・日本画・油彩画)
・特殊な額にするかどうか(箱額・正方形の額)
・マットの材質や厚み、特殊な枠のカット、幅をどれくらい取るのか
・ライナーの材質や幅、有りか無しか
・アクリル(ガラス)からどれくらい離した深さで絵を収めるのか(額の厚み・深さ(ドロ足))
対して、既製額は作品の規格サイズ(SMとかF4号とか)さえ分かればネットショップでもサクッと買えてデザインもそこそこ豊富、かつオーダーよりも費用をグンと抑えられるので額装に慣れていればかなり使い勝手の良いものになると思います。
とはいえ、ネットショップでは実物の額を見て作品と合わせるわけじゃないので慣れがないと多少のイメージ違いなどでチョイスを失敗する可能性は高いです。
既製額を買って額装する際、慣れるまでは現物を店頭で見てからネットのほうが安い場合ネットで買うという選択が賢い方法でしょう。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク➃~⑦)額紐は必須・結び方も大切
額紐は基本必須アイテムです。
オーダー額の場合も既製額でもオマケのように付いている紐(画像上の白と茶色のもの)は強度が低くて劣化も早いので、ケブラー紐(画像下の黄色いもの)にしましょう。
ケブラーは登山や防弾チョッキにも使われる非常に強度の高い紐です。額屋さんや画材店、ネットショップでも買えます(^^)↓
そして、額紐はいくつか結び方があるのですがYou Tubeで額屋さんの簡単でいい結び方があったのでこれを参考にしてください。
最も重要なのは、結び目が真ん中に来ないようにすることです。
この動画のとおり結んでおけば問題ありません(^^)
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)⑤額やアクリル板に傷やカケがないかを必ず確認して、あれば交換・修復する
百貨店や画廊でクレームが起こりがちなのがこれです。
既製額でも買ったときから額の角が欠けていたり、搬入で傷がついてしまったりすることは少なくないです。
アクリル板もギャラリーの照明の下では傷があると良く分かってしまいますし、買う立場からしたら最初から傷んでいるものを買いたいとは思わないですよね。。
アンティーク仕上げの額の場合は少しなら気付かない場合もありますが、修復でなんとかなる場合もあります。
買う時に確認できる場合は必ず額縁の角や表面に傷やカケがないか確認してから購入しましょう。
ネットショップで購入した際にはあきらかな欠陥があった場合は返品交換するべきです。
過去に、作品のお嫁入りが決まった後でお客様が額の傷に気がついてクレーム・返品、額縁交換で納品と大変なことになっていた作家さんがいました。。
せっかく作品を気に入ってくれたお客様をガッカリさせてしまいたくはないですよね。。
また、こういったトラブルは画商さんやデパートなどの取引先の業者からすると、「気を付けていれば防げるトラブルを未然に防げない脇が甘い作家とは一緒に仕事をしたくない」となって避けられてしまうこともあります。
作品を商品として送り出すにあたっての責任を持って必ず行うタスクにしましょう。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)⑥額装済みの全ての作品に黄袋を用意する
黄袋は作品の保管・保護のために大切なアイテムです。
額を購入した際にはオーダー額だと込みで付けてもらえる場合も一部ありますが、大体は別途注文となる場合が多いです。
基本的に注文するか、自作するかのどちらかになります。
ミシンが無い場合、手縫いじゃ時間がかかって大変なのと、ある程度の大きさのものは特に業者さんで注文するほうがお金も手間もお得でしょう。
額屋さんか、ネットショップで黄袋が注文できるサイトがあるので、そちらがおすすめです。
もしくは自作するのはそんなに難しいことではないので、ミシンがあるなら少しの手間で安く仕上がります。
端は必ずほつれてこないように処理をして、(端を三つ折りしてミシン縫いすればOK)あとは袋状に縫えればOKです。
縫い始めと縫い終わりの端の部分は返し縫いをしておくと強度が増します。
…実際会場によっては端がほつれた状態の黄袋はダメ出しをされていた例もあるので、見栄えも良くなるひと手間はちゃんとしたいですね。
私が自作したものですが、裏返すとこんな感じで実にシンプルです。私の場合、端がそのまま活かせる箇所はほつれることがないのでそのまま使っています。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)”黄袋”と言っても実際は”布の袋”でOK
袋はナゼ”黄”袋と言うのかというと、古くは虫除けのためにウコンで染めた布を使っていたためです。
現代では虫食いはそれほど気にならないのと、実際にウコンで染めたものは手に入りづらく高価になってしまったので、額を保存する布の袋であれば黄袋と呼ぶようになりました。要するにその名残りです。
ウコン染めの原型に近い綿布(シーチング)なら間違いはなく手に入りやすいですし、コスト的にも優しいです。
画像は私の自作黄袋ですが、手芸屋さんでシーチング布(メーターあたり/円)を購入してそれぞれ額に合わせて裁断して縫製しています。
シーチングは安価なのに色数豊富なのでいろいろと選べて楽しかったりします。(^^)
正直、作品(額縁)を保護してくれる布でできた袋ならば布の種類に特に決まりはないので自由です。作家によっていろいろと違ったりして個性出ますよ~。(すっごい柄の布とか使ってたり(笑))
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)⑦額装済みの全ての作品に差し箱を用意する
差し箱は、蓋と本体が一体になった額縁を保存するための箱です。
箱の本体は段ボールで、留め具には文化鋲と呼ばれる特殊な鋲+ポリワッシャーか、ひもを結んで綴じるタイプのものがあります。
作品が出しやすく、額を保存する箱と言えばコレ!といった様式美の典型でもありますね。茶器や茶道具といえば木箱に入っているのと同じ感覚です。
画像は私が自作した差し箱ですが、黄袋と同様にこちらも注文するか自作するかの2択です。
自作するのは材料と道具を揃えることから始まり、手間もかかるのでそこまでおすすめしないのが正直なところです。
材料となる段ボールや文化鋲はロット売りで一度に結構な量を買わされるので・・・。
駆け出しの活動の場合には作品を制作したり、諸々の準備が大変ということもあるのである程度そのあたりに慣れてきてから自作できるようになるのでも遅くないです。(私はそうでした)
とはいえ、自作できるスキルを身に付ければ注文するよりはもちろん安く済みます。
まぁでも最初は注文することをおすすめします。額屋さんかネットショップで安く制作してくれる業者さんはけっこうあるので、そこを頼るのが無難ですね。
あとは、黄袋同様に大作については材料とする段ボールを買う際に買える大きさに限度があるのと(最大サブロクバン(1畳サイズ))それを加工するための場所の確保も必要になるので総合的に判断して買う方がお得です。
・・・額だけ複数を格安で仕入れた・時間に余裕がある場合なら自作がお得ですかね。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)差し箱+黄袋=パッケージングの”正装”
今回の④~⑦の作業タスクで額装に加えて【差し箱+黄袋】これが作品を販売するにあたっての商品パッケージの”正装”です。画像のような状態ですね。
これが揃えばどこに出しても通用する状態の商品パッケージの原型になります。
日本のアートシーンなら百貨店からアートフェアや画廊、アートイベントなど何処へいっても通用する状態です。
海外へ出すにあたっても丁寧な状態で送り出せるのでまず間違いないです。
講義-第24回-額縁と商品としてのパッケージング 前編 (作業タスク④~⑦)【見極め】作品価格や展覧会の規模感で箱と袋の種類を使い分ける”例外対応”
基本的には額装をして差し箱+黄袋がどこに出しても通用する”正装”のパッケージングであり、絵にとっての最上の装いです。
しかし、展覧会によっては例外もあります。規模感を見極めてその場合に合ったパッケージングのコストを求められたり、こちらが対応したほうがいいケースがあります。
そういう場合がどんなときかというと・・・
☆パッケージングが”例外対応”でOKのケース☆
・作品の大きさ・価格が統一される展覧会の企画
・高価格帯(10万円~)を置かない会場・あまり売れない会場
・展覧会規模の作品点数と参加作家人数が膨大(100点とか100人とか)で、作家1人1点での参加
こんな感じの展覧会や会場の規模感なら”例外対応でもOKです。
要するに、低価格帯の作品を多く販売する場合や、作品が売れたとしても作家への利益率があまり高くない場合で”例外対応”を選ぶべき時があり、経費削減的な目線です。
よって、”例外対応”のパッケージングは”正装”からクラスダウンしたものだと捉えてください。
こんな感じで変更すればOKです。↓↓
☆”例外対応”のパッケージング☆
・差し箱→かぶせ箱(大体が元々額が入っていたものでOK)
・黄袋→ビニール袋(元々額が入っていたものでOK)
かぶせ箱とは、画像のような蓋と額を入れる本体とが分かれている箱で、既製額はこの箱に入っていることが多いです。
つまり、既製額を購入して額装した際の”例外対応”なら新たに差し箱と黄袋を用意しなくても良いということになります。(経費削減)
展覧会の規模やクラス感で”例外対応”を見極めて選ぶべきではあるのですが、百貨店の美術画廊であっても駆け出しの画家なら3万円~高くて5万円くらいまではかぶせ箱とビニール袋でOKな会場もありました。(あまり格好は良くないけれど・・・)
画廊などで1万円以下で販売する場合の小さな作品等はこの対応でも問題にはならないと思います。
正直なところ、画廊の方針にもよりますが、5万円くらいの作品まではこの対応でもいける場所は多いです。
会場側に面と向かって”例外対応”(かぶせ箱とビニール袋)と”正装”どっちがいいか聞くと絶対に差し箱と黄袋(正装)がいいと言われるので、安い作品でも用意を強いられると思います。。
なので聞かずに見極めてしまうほうが”例外対応”でパッケージングの経費は浮く場合が多いです。
ご自身の販売している作品の価格帯にもよりますが、3~5万円までは例外対応、それ以上は差し箱と黄袋と決めておいてもいいでしょう。
一般的な市場でもこのあたりの金額がパッケージングのボーダーラインです。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク④~⑦)【パッケージング余談】”例外対応”と美意識
ここは私の私見ががっつり入ります(^^;)
正直、”例外対応”のかぶせ箱とビニール袋では全ッ然かっこよくないし、1点物である特別感を演出できないので非常にチープな感じになります。
それに、そこそこの大きさの額は展示のたびに出し入れをしていれば、けっこう扱いに気を付けていないと元の箱やビニール袋はつぶれたり破けたりしがちです。
かぶせ箱とビニール袋よりも、差し箱と黄袋のほうが作家側としても作品がスムーズに取り出しやすく、仕舞いやすいのでそういう観点からも”正装”を用意したほうがいいでしょう。
周りの画家仲間を見ていて思うのですが、思っている以上に作品の扱いやパッケージングにも性格というか意識とか配慮の癖は出ます。
(私もそう思って気を付けています)
ご自身が絵を買う側の立場に立ったらと考えてみてください。
傷や穴ぼこが付いたり潰れ気味の箱に、額の角が擦れて傷がついた破れる手前のビニール袋に入った絵ってどうでしょうか…?
いくら本体は良くても、ちょっと…って思いませんか?モノは新品だからまあいっか…って割り切れるかもしれませんが、せっかくそれなりの額を支払ったのにちょっとモヤっとするんじゃないかと思うんです。
あなたの美意識×作品1点あたりの販売価格とコスト
これを考慮した上でも”例外対応”は見極めてもらえるといいのかなぁと思います。
講義-第24回-額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク➃~⑦)まとめ
お疲れさまでした。
いかがでしたか?
今回は
額装と商品としてのパッケージング 前編(作業タスク➃~⑦)
をお送りしていきました。
作品が完成した→額装するといった流れを習慣にして差し箱と黄袋を用意すれば、どの会場でもまず間違いなく、どこでも通用する商品としての体裁が整います。(正装)
馬子にも衣装とはよく言ったもので、これは作品にも言えることです。額を付けてあげることで作品としてのクラス感は格段にアップします。
これと合わせてコスト的な目線から”例外対応”も考慮できるといいかなと思います。
次回は今回の後編にあたる⑧・⑨の作業タスクで額装・パッケージングのパートの仕上げとなります。
また次の講義でお会いしましょう!
講義-第24回-ワーク
今回のワークは、『作品を1点額装してみよう➀』です。
今回の課題は、次回の第25回ワークと連動した内容になります。次回分と合わせてチェックしてから取り掛かるのをおすすめします(^^)
額装をしたことがない方はこれを機に!したことがあるよ~してるよ~って方はこれを機に未額装の作品を、または新作を1点額装してみましょう。
自分で選ぶのはもちろんですが、今回の課題に関してはできればプロのいるところ(画材屋さんや額屋さんなど)店頭へ行って相談しながら決めてみてください。
・自分の作品に合う額のデザインや雰囲気(見た目)
・技法別での額(デッサン・水彩・日本画・油彩画)
・特殊な額にするかどうか(箱額・正方形の額)
・マットの材質や厚み、特殊な枠のカット、幅をどれくらい取るのか
・ライナーの材質や幅、有りか無しか
・アクリル(ガラス)からどれくらい離した深さで絵を収めるのか(額の厚み・深さ(ドロ足))
今回の講義の最初でも触れたように、このあたりが実際にプロがいるお店に行くと相談しながら決めたりして額を作ることができます。
今後自分で額装をしたり、既製額を買って額装する場合に気にするべきポイントとして話を聞きながら、ぜひこの機会にお店で1点仕立ててみてください。
※このワークには下のフォームに必須回答項目はないので、額装する作品と額装済みの写真画像をメール添付で送信すれば完了となります。
(質問や感想があればフォームよりお願いしますね)
●ワークのねらい●
・作品1点をしっかりと額装して商品として最終完結させる。
・額装のプロ(業者さん)の意見をもらって、自分の作品を額装で映えさせるための気付きをゲットする(第三者視点からの作品を良くするヒントをもらいに行くつもりで行く)
・実際に販売されている額のデザインを直にリサーチして、どんなデザインや色のものが自分の作品に合うのかを考える機会にする。
・今後自分で額装する際の学びに繋げる
■ワーク実習の手順■
➀第25回のワーク内容も確認する。(次回配信をおまちください)
②額装する作品を用意する。
➂額屋さんへ行ってプロ(業者さん)と相談、話を聞きながら額装する。
(どうしても無理な場合は既製額で合うものがあればそれでも・・良しとします!)
➃第25回のワーク内容ですべき手順を踏む。(このワーク単体で取り組む場合は飛ばしてOK)
⑤今回額装した作品と額装済みの写真画像をメール添付にて提出。
※注意事項※
・なるべく額屋さん・画材屋さん併設の額縁コーナーでプロ(業者さん)と相談しながら額装しましょう。
・プロ(業者さん)の助言をもらったり、見立ててもらうことで第三者視点でかつ、額装を含めた作品を良くするための気付きを得る機会にするのがこの課題の目的です。
・第25回のワークと連動した内容ですが、このワーク単体で取り組んでしまってもOKです。
・額装する作品の大きさは問いません。(自由です)
・今後の販売や展示に出すことを踏まえた上で額装を考えましょう。
※画像はメール添付で提出してください。
必ず氏名を忘れずに記入すること。(どなたの画像かわからなくなってしまいます(涙))
メール件名:【お名前〇〇〇〇 講義第24回ワーク回答】
または、【お名前〇〇〇〇 講義第24・25回合同ワーク回答】
画像提出はこちらメールアドレスへ↓↓↓
amikainoueart@gmail.com
最後はアンケートのお願いです。(あれば)
今回の講義内容での質問や感想などがあればこちらにお願いします。
あなたやこの講座で学ぶ仲間にとって、充実した講座を作っていくためにあなたの抱えている悩みやギモンをぶつけてもらえると嬉しいです。
(※講義内容の参考にさせていただきます。)
※ワークへのコメント・添削返信は画像のメール添付提出が完了した方から随時行います。
(返信目安は1週間前後)※
※セルフスタディコース【SSC】の方はワーク提出不要です※