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講義-第43回-買って損した額を増やさないためのチェックポイント

 

 

【展覧会経験からのフィードバック➁講義-第43- 買って損した額縁を増やさないためのチェックポイント

 

講義第43回の今回は買って損した額を増やさないためのチェックポイントです。

 

展覧会が終わった後はお嫁へ行った作品、在庫として残った作品、それぞれあると思います。

 

前回のフィードバック項目にも額縁については触れましたが、今回はより具体的に細かく解説していきます。

 

展覧会を開催する前でも額装を考える上でのヒントになる内容なので、チェックしてみてくださいね(^^)

 

ではでは、早速いきましょう。

 

講義-第43-買って損した額を増やさないためのチェックポイント額縁を選ぶ際のチェックポイント

 

 

 

  1. ➀パネル/キャンバス用か、水彩/版画/鉛筆画(デッサン)用または箱額か
  2. ➁作品の雰囲気と額のデザインが西洋風寄りか和風寄りか
  3. ➂内と外の親和性(内:作品 外:額縁)
  4. ④額縁と作品との距離(マットやライナーの有無)
  5. ⑤額装をある程度統一する
  6. ➅自宅などの室内空間で実際に飾られることを想像してみる
  7. (額装はインテリアに通ずる)

 

➀パネル/キャンバス用か、水彩/版画/鉛筆画(デッサン)用または箱額か

→初歩的なところですが、中に入れるものが違うと額縁は全然違います。そこを間違えて買ってしまうとそれこそ無駄な出費なので注意しましょう。

→パネル/キャンバス用は奥行きがあって1枚あたりのお値段が水彩/版画/鉛筆画用に比べると少し高いです。とはいえ、水彩/版画/鉛筆画用はマット(作品と額縁の間に入れる間)が別途必要になるので、そこを含めればあまり費用は変わらないでしょう。

→箱額は”箱”と付いているだけに奥行きにゆとりのある作りになっている額縁なので、特に厚みのある支持体を使用する方や、額装で奥行きを活かしたい場合にオススメです。

→箱額の既製品にはあまりデザインのバリエーションがないです。故に人と被りやすいことも…。デザインを選んで発注すると割高になる点だけは注意しましょう。

 

➁作品の雰囲気と額のデザインが西洋風寄りか和風寄りか

→まず、作品の題材や使っている技法・素材で、作品の雰囲気をざっくりと西洋風か和風かに分けるところから考えてみましょう。

→例:日本画=和風 油絵・アクリル画=西洋風(技法が洋か和か) 作品の題材・ルーツが西洋寄り/和風寄り

→どちらにも当てはまらないと感じた場合には寄せたいほうを選びましょう

 

・作品が西洋風の場合

 →正直、一般的な額屋さんで販売されている額縁の殆どが何となくでも合うものが多いと思います。販売されているような額縁のルーツの殆どが西洋式だからです。

 →草花や幾何学文様などの西洋的な彫刻が大小入ったものを積極的に取り入れられるといいですね。(見栄えや高級感を演出しやすい)彫刻部分の割合や大きさは、作品全体のサイズ感や絵の中に描かれたものの大きさとのバランスを見ながら選ぶといいでしょう

 

・作品が和風の場合

 →凹凸の激しい彫刻があっても面積が多くないもの、木目を感じられたりするような素材が素朴に感じられるようなものはイヤミなく合うと思います。

 →逆に、西洋風の彫刻が全面に入ったものでもむしろ調和できるデザインはたくさんあります。現代の住宅環境自体が日本は和洋折衷なので。そういった一見西洋風に見えるデザインを合わせたい場合は次の➂を意識してください。

 

➂内と外の親和性(内:作品 外:額縁)

→作品内に入っている色と額縁の色を合わせると、親和性(組み合わせの良さ)を感じられていいコーディネートになるよってことです。

→作品に使われている色と額装の色を合わせる意識ですね。

→特に、金や銀を「内」=「作品の中」に使う場合には「外」=「額縁」はかなり意識したほうがいいです。金と銀の額縁のデザインはかなり豊富にあるためです。

→例えば、「内:金」に対して、「外:銀」にしてしまうのはミスマッチになりやすいです。(絶対ではないですが)その場合は外も金にしましょう。

→どちらかというと金は暖色系、銀は寒色系に見えやすいのもありますし、人間のファッションコーディネートでも金と銀を両方めいっぱい付けるのはあんまり上品には感じませんよね?それと似ています。

→金銀以外でも多いのは、”木”を感じるデザインの額縁です。よって、ブラウン系ですね。こちらも選択肢豊富。できれば作品内にある色味に近いブラウン系の額を選んであげれば極端なミスマッチは起こさないでしょう。

→写真↑はアーティゾン美術館で展示されていたキュビスムの巨匠ブラックの作品ですが、内と外の親和性が100%すぎる組み合わせですよね。ここまで近いと逆に調和し過ぎてちょっと退屈な気もしますが、まぁ間違いのない組み合わせだなと思ってもらえるいい例じゃないかと思います。

 

 

④額縁と作品との距離(マットやライナーの有無)

→キャンバスやパネルで制作する方の場合には裏からはめることで額装できる額縁が便利で、その場合にはライナー(額縁と作品の間に入っている部分)が元々セットされていることがほとんどなので、自身で制作できない場合は素直にそれを利用すればOKだと思います。

→この項目が特に重要なのは支持体が上記のもの以外、主に紙など厚みがあまりないマットが必要な額装をする方です。(水彩/版画/鉛筆画)

→写真↑は世界堂(新宿店)にあったものですが、感覚として作品と額縁の間には最低でもこれくらいの距離は取ってあげたほうが高級感が出ます。作品の大きさがそれなりにあってもです。(これはかなり小さいですが。)

→1枚でシンプルに入れるのもいいですが、この例のようにダブル(2枚)で奥行きを出すのもおすすめです。(高級感をプラスする)

→間隔が狭いと窮屈で安っぽい印象になるので注意です。(これしつこく言ってますが、けっこう素人感を出しちゃいます。。)

→シンプルな白いマットもいいですが、この例のように質感のある色付きのものを合わせられるといいですね。ちなみに↑この例もかなり➂の親和性を意識した額装の配色になっていますよね。(作品内の色をマットに使っている&作品と同系の色を意識した額装全体の配色)

 

⑤額装をある程度統一する

→ほとんどの作品を同じタイプの額か、その色違いなど数種類のもので額装を統一している方もいます。

→額装をある程度統一すると会場に一体感が生まれ、すっきりして”絵を見やすく”できます。(それぞれを比較する部分が純粋に絵の内容だけになるため)

→額縁のデザインにばらつきがあると、絵の内容+額縁とトータルで1点1点の違いを比較しながら判断する見方になりますが、額がある程度同じなら違う部分は純粋に作品の内容だけになります。

 そうすると作品同士を比べたり、単純に作品の中の事柄だけに集中してもらいやすくなるわけです。

→ある程度作風が固まっている作家さんであれば、1点ずつの額装で迷う時間&考える余裕を他のことに回せるというメリットもあるので数種類チョイスできるデザインがあるならこの手はけっこういいと思います。

→特に、個展でやると”いいすっきり感”を演出しやすいです。

 

➅自宅などの室内空間で実際に飾られることを想像してみる(額装はインテリアに通ずる)

→これは、作家側(作り手)として作品の出来や技術的な観点にのめり込めばのめり込むほど意識が薄くなる感覚かもしれません。

→どなたかのお家へお邪魔した際やYou tube・ネット検索すれば自宅内を公開している方など(内装リフォーム例とか)で、他人の生活空間を目にする機会はあると思います。そういった場所に「もし自分の作品が飾られるとしたら」を考えてみることが大切です。

→「どんな家の、どんな雰囲気に自分の作品は合うのだろうか?」とか、たとえば…「フローリング、畳、洋室、和室、リビング、寝室、玄関、廊下、トイレ…」「自分の作品がどんなところに飾ってもらえたらぴったりか??」なども想定できたらかなり上級者です。

→接客でのクロージングの際にも「〇〇(場所)に飾っても素敵だと思います」と提案しやすくなりますね~。

→リフォーム関係や飲食店・喫茶店で内装や雰囲気がいいお店や、住宅展示場・家具屋さん(カジュアルから高級アンティークまで)など行ってみると

「額装=インテリアやデザインである」の”目”が養われて参考になることがけっこうあると思うのでオススメです。

→生活空間や内装の一部として”自分の作品をどうコーディネートしたら品が良くなるか?”または”存在感があるものにできるか?”の視点を持つと額装のセンスが上がると思います。

 

講義-第43-買って損した額を増やさないためのチェックポイント次の展覧会で在庫作品は額装を変えてみる

 

展覧会で手元に残った作品を次の展覧会では額装を変えて出してみることをおすすめします。

 

手元に残ったということは、その作品=在庫ということなので、額縁を変えるとなると現実的には追加で経費が掛かるということにはなります。

 

しかし、ここまでの講義で度々言っていますが実際に”額装を変更したらすぐに売れた”ということはよくあるので、成約に繋げるためにはかなり有効な手段です。

 

私井上はもちろん、知り合いの作家さんでもあるあるの事例なので特に「何度か展示に出しているけど…全然反応がないな…」という作品に有効です。

 

というのも、手元に残り続けてかつそのまま同じ額装の作品は、作家本人側としても展示していて何か一種のマンネリ感を感じてしまっているせいか、そういう雰囲気が知らぬ間にお客様へ伝わってしまっていたりします。(かなり曖昧なことなのですが・・・)

 

心機一転して作品解説をするためにも額装を替えた方が新鮮な気持ちで作家側も作品に向き合えるので、めちゃくちゃ精神論的な感じですが額装変更はおすすめです。

 

変更前の額縁は傷や不備が無ければ別の作品にも使えますしね。

 

新たに額装する額縁を選ぶ際にはチェックポイントを参考にする&変更前とは雰囲気を変えたものにしてみるのがいいでしょう。

 

講義-第43-買って損した額を増やさないためのチェックポイント連作やシリーズもので描いた作品を同じ額装で統一する

 

チェックポイントで額を統一することについては触れましたが、ここでは連作やシリーズにしたものだけに特化しています。

 

シリーズ作品ごとに額縁と統一すると、そこから作品を選んでみたくなるような、”特別感”を演出できます。

 

複数人で構成されたアイドルグループの中でも”〇〇推し!”とかその中で誰か1人を気に入って選ぶ人は多いですよね。そういう”選びたい気持ち”にさせるというのが感覚的に近いかもしれません。

 

なのでこれは、「その中から選ぶ心理に持っていかせる工夫」と言えます。

 

また、連作よりももっと少ないペアで制作をした際にもできる工夫です。額縁を統一または同じデザインで色違いにして対にすると「両方を1ペアとして飾るために買いたい」となる場合もあります。

 

これは特に普段額装を統一していない作家さんがやると効果を発揮できるテクです。(もちろん連作やシリーズものでの制作ありきなので、ある程度それぞれに枚数は必要ですが!)

 

講義-第43-買って損した額を増やさないためのチェックポイント応用編:気に入った額縁なら、額縁に作品を合わせて制作するのもアリ

 

 

自分の作品に合う額縁を探していれば、額屋さんやネットショップで、一点物や気に入った額縁に出くわすこともあるかと思います。

 

特に、額縁屋さんなどで売られているミニ額(規格外サイズ)のようなものは一点物であることも多いです。

 

ちなみにこの写真↑の額縁は額屋さんで購入した全て一点物の額縁でした。

 

気に入った額縁が手に入った場合は、額縁の雰囲気やデザインに合わせて作品を制作をするという逆からの制作過程もいいでしょう。(私の制作でもけっこうあります)

 

普通は完成した作品に合う額縁を選んで額装する(作品ありきでの額装)と思いますが、ここでは逆もアリだよと言いたいわけです。

 

これはこれで、一点物の額縁を使用するならば、”思い入れのある額縁と出会って、工夫して生まれた1点である”ということもウリになると思います。

 

そしてなによりも、額縁との組み合わせを考えながら作品を制作すると”内と外”の一体感を意識しやすくなるのでトータルで完成度が高い作品が完成しやすいです。

 

「トータルで完成度が高い」とは、「作品としての見栄え+飾りやすい作品」だと思ってください。

 

作家さんのスタイル(信条)や制作過程で欠かせないことなどはいろいろあると思うので、この方法は絶対やってください!とは言えません。

 

しかし、この敢えて逆方向からの視点で制作を考えてみることは、作り手側の立場よりも少しお客様側(飾る側)に寄り添ってみる感覚に近いでしょう。作品を見た時に「自分の家に飾りたい!」と思ってもらえる作品とは”良い作品”としての1つの基準であると私は思います。

 

作家さんによってはこのほうが合っている(良い作品・売れやすい作品・喜ばれやすい作品が完成しやすい)場合もあるので、一度は試してみる価値はあるでしょう。

 

上で解説した”額装を変えて余った額縁”があれば、1つこの視点で制作してみるのもいいですね。

 

講義-第43-買って損した額を増やさないためのチェックポイントまとめ

 

お疲れさまでした。

いかがでしたか?

 

今回は

買って損した額を増やさないためのチェックポイント

をお送りしていきました。

 

改めて額縁選びについてを解説していったので、展覧会開催前も後も参考にしてもらえる内容だったと思います。

 

額縁自体、けして安くはないものですからね…額装する完成作品を眺めつつ、今回の内容を踏まえつつで選んでみてください。

 

出来上がった作品に額装をするのは、お人形さんにキレイなお洋服を着せて身だしなみを整えてあげるような感覚とでも言いましょうか…晴れ舞台へ送り出す我が子に、お洒落をさせてキレイにしてあげる…仕上げのような工程です。

 

もちろん肝心要は中の作品ですが、同じくらい額装も重要です。

 

作品と共に作家さんのセンスも問われる要素ですから、制作と共に”目”を磨いていきましょうね(^^)

 

講義-第43-フォーム

 

ご質問・アンケート(あれば)

 

今回の講義内容での質問などあればこちらにお願いします。

 

あなたやこの講座で学ぶ仲間にとって、充実した講座を作っていくためにあなたの抱えている悩みやギモンをぶつけてもらえると嬉しいです。

(※講義内容の参考にさせていただきます。)

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